秘密の地図を描こう

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 新造艦と言うだけあって、かなり居住性は良さそうだ。
「……とは言っても、なぁ……」
 問題は、これがインパルスの母艦として設計、建造されたと言うことだ。
「あの問題児を俺に押しつけたかっただけじゃないだろうな」
 こうぼやきたくなるくらいシンには手を焼かせられたのだ。
 もっとも、と小さなため息をつく。
 今自分の手元にいるあの二人だって似たようなものかもしれない。それ以上に、と彼は続ける。
「一番の問題児はあいつかもしれないがな」
 それでも、彼の場合、おかれてきた環境が関係しているから仕方がない。何よりも、それを作ったのは自分達だ。だから、責任はとらなければいけないのではないか、と思っている。
「何よりも、あいつはちゃんと話を聞いてくれるもんな」
 そして、同じことを繰り返さないようにと気をつけているらしい。もっとも、それは自分が関わることにはなかなか適用されないという問題が残っているらしいが。
 あのラウに注意されても改めないというのは実は大物の証なのだろうか。
「まぁ、キラのことはあの人に任せておけばいいか」
 あんなに面倒見がいいとは思わなかったが、と付け加えた瞬間、苦笑が浮かんでくる。
 レイから話は聞いていた。しかし、実際に目の当たりにしたときの衝撃はとんでもないものだった。
 しかも、彼が家事をしていると聞いてはなおさらだろう。
 キラにそんなことをさせない方がいいとわかっていても、だ。
「久々にあいつの顔を見に行くのもいいかもしれない」
 レイに都合を聞いてもらおうか。
「そういや、あいつら、どこに行った?」
 艦長に挨拶に行っている間、控え室で待っていろと命じたはずなのに、ここには誰もいない。
「ひょっとして、あの問題児と一緒にどこかをうろついているのか?」
 可能性は十分にあり得る、とすぐに判断をする。
「全く……仲良しグループじゃないんだぞ」
 こうぼやくと、控え室を出た。
「とりあえず、デッキか?」
 可能性が高いのは、と呟く。そこであれば、とりあえず怒鳴るのはやめておこう。そうも続けた。
 MSが格納されるそこは、自分達にとっては重要な場所だ。だから、自分の目で確認したいと思っても当然だろう。
「ついでに、整備のチーフにも挨拶しておくか」
 それがいいだろう。そう判断をして歩き出す。
 そのまま入り口まで来たときだ。
「なぁ、レイ! 頼むから教えてくれよ」
 シンのこんな声が耳に届いてくる。
「俺は、その必要を感じない。そもそも、お前に教える義務はないはずだ」
 それに対するレイの反応から判断をして、キラのことではないか、と推測できた。
「……レイ。シンの恋路の邪魔をしているの?」
 さらにルナマリアの声も響いてくる。
「あいつ……」
 人前でそんな会話をしているのか、とミゲルは思わず顔をしかめた。
 彼の存在はできるだけ秘密にしておきたい。それなのに、どうして人前であんな会話をしているのか。
「レイに逃げられないためか?」
 可能性は否定できない。
 その上、ルナマリアを巻き込めば彼女が応援してくれると思ったのだろう。しかし、彼女が興味を持てば芋づる式にあれこれとばれかねない。
 何があっても、それだけは避けなければいけないことだ。
「まだ、勤務時間中だな」
 怒鳴る理由にはなるだろう。
 そう考えると、声がした方向へ足早に歩いて行く。
「いい加減にしろ! 何と言われても、俺はお前をあの人に会わせるつもりはない!」
 あの後、ストレスで熱を出したぞ……とレイが言っている。
「お前の言動はあの人を傷つける。だから、却下だ」
 ルナマリアもいいな? と彼が付け加えた。本当に、レイはキラが大好きだな、と思う。
「何の話をしているんだ、お前ら! 俺は控え室で待機していろと言ったよな?」
 何をしているのか? と続ける。
「隊長!」
 慌てたように彼らは居住まいを正す。
「全く……最初から始末書かよ」
 先が思いやられる、と思わず呟いたとしても、誰も非難しないだろう。そう考えてしまうミゲルだった。

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最遊釈厄伝